改訂版・時間よ、止まれ。

「あのさ…、井上には言うんだけど……」



「うん」






次に新井から出た言葉は、予想よりも遥かに勢いがなかった。






「隣のクラスの斉藤由歌梨、ちょっとしつこいよなぁ…」



「…えっ！？」






新井、幼なじみなんじゃないの？



なのに斉藤さんのこと、しつこいなんて……






「俺、小さい頃のアイツ知ってるんだけど、あそこまでしつこくなかったはずなんだよ」



「あ、うん…」



「なのに、外国から帰ったらあんな性格になってて。何でこーなっちまったのかは分かんないけど…」



「そっか」






新井、斉藤さんの変化に戸惑ってたんだ。





休み時間には楽しそうに話してた感じだったから、全然分かんなかった…。








「俺だってクラスのヤツらと話したいのにさ、アイツ分かってくれずに自分の話ばっかしてるし。でも、俺がアイツに対してしつこいと思ってるってことは、俺の周りのヤツとかは更にしつこいと思ってるんじゃないかと思って」




「…新井……」








そんな風に思ってたんだ？




新井、ちゃんとクラスメイトのことも考えてたんだね…。