改訂版・時間よ、止まれ。
「…あ。やっと本気で気付いたね。てか、自分の気持ちにニブすぎるんだよ、さおりは」
「そっかーー。漫画に例えられるまで、全然気付かなかった…」
「それもすごいけど」
その時ちょうどエリアから出たボールがこっちに転がってきて、華恵がそれを受け止め、コートへ投げて返した。
「でもさおりが気付いて良かったよ。私もね、さおりから言ってくれたら言おうと思ってたんだー」
「…何を?」
「私も好きな人がいるんだ」
「もしかして…、新井?」
華恵の言葉に少し不安がかすめたけど、華恵はそんな私を笑い飛ばしながら見つめた。
「はははっ!!それならさおりが自分で気付く前に言って、けん制してるよ。そうじゃなくて!!私、1組の市川くんが好きなんだ」
「市川くん…?」
「うん。市川満(いちかわ・みつる)くん。新井と同じサッカー部なんだけど…、新井がサッカー部であることすら知らなかったさおりが知るわけないか」
「悪かったわね!!」
「佐藤さーん!次うちの班試合だよー!!」
その時丁度、華恵と同じバレーボールの班の子が、華恵を呼びに来た。
「え?もうそんな時間?今行くー!!」
華恵はそう答えて、私の方に向き直った。
「この話はまた今度ね!じゃあ、バレーの応援よろしくー」
私に笑顔でそう言った華恵は、手を振りながら自分の班の集まっている方に駆けていった。