改訂版・時間よ、止まれ。
「お前あんだけ俺の大親友に『提出しろ』って迫っといて、自分は出さないとかナシだろー」
「後から出すつもりだったの!だいたい『大親友』って何よ?大親友なら最初から新井が注意してよね」
ホントは……
『サッカー部』って書くつもりだった。
新井のこと、応援したいと思ったから。
新井のサッカーしてるところ、もっと見たいと思ったから。
4月のハイキングの時の、新井のサッカーしている姿、本当に生き生きして楽しそうに見えたから。
でも、本人に直接『応援に行く』なんて、恥ずかしくて言えなくて。
いつもケンカばっかりだから、余計に恥ずかしい。
だから、こっそり後ろから応援しようと思ってた。
二人ともケンカ腰になってしまって、またしても『しまった』って思ったんだけど…
新井が少しの間黙って、教室に沈黙が流れた。
「もし……、もしもだけど」
「え?」
急に私の顔を見つめ始めた新井の表情は、さっきまでとは打って変わって、かなり真剣なものだった。
「もし井上が迷惑じゃなかったら、サッカー部応援に来てほしい…」
「…新井?」
…どうしたんだろう?
『大親友』の紙には強引に『サッカー部』って書いたクセに。
何で私の時は、そんな真剣な顔して頼んでくるの…?