改訂版・時間よ、止まれ。
「んん?もう県大会直前だからな。部活も本気モードじゃなくて、調整モードになってるから。週番で遅れたぐらいなら文句言われねえだろ」
「…そっか」
「だから、今日は俺が日誌と調査票を担任に渡してくる」
「え!?」
私が新井の発言に驚いていると、いつの間にやら新井はちゃっかり日誌と調査票を自分の手におさめていた。
「井上の気が変わって、他の部活書かれたらいけねえし」
「ちょっと、いくら私でもそんなことしないって!!」
「わりいわりい。冗談。でも、週番のコンビが井上で助かった。…ありがとな」
「え…?」
新井の顔が、いたずらな笑顔から優しい微笑みに変わっていった。
その変化に、私の胸はドキンと高鳴った。
「うん……」
「じゃーな!」
夕日が赤く照らし始めた教室を、新井は颯爽と出て行った。
私だって、新井に助けられた場面があったはずなのに。
でも、素直に『ありがとう』が言えなかった。
照れくさくて、恥ずかしくて……
最後まで新井に対して素直になれなくて…
何も言えなかった。
こんなんじゃ私、全然可愛くないよね…。
――
―――――