改訂版・時間よ、止まれ。
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ホイッスルが鳴って、試合が始まった。
それと同時に、新井は転がったボールを追いかけ始めた。
主将をやっている新井は、ボールの動きや相手チームの動きも見ながら、時折大声でチームメイトに指示を出していた。
ボールを持っていない時でも、無駄を感じない動き。
新井が動くと同時に、斉藤さんだけでなく、観客席のあちらこちらからも、新井を応援する黄色い声が聞こえてきた。
やっぱり、私の声なんかかき消されちゃうよね……?
そう思ってしまった私は、ただ静かに新井を見守った。
「市川くん!ファイト〜〜!!」
ただ…
華恵の声援は、隣で聞いてたら苦笑いするほど大きかったけど。
気が付けば前半が終わって、0対0のドロー。
ここから見ていた感じ、うちが優勢だと思うのに、1点が取れない展開だった。
「さおりの応援が足りないんじゃないの〜?もっとちゃんと応援しなよ」
「そんなの関係ないでしょ!どうせかき消されちゃうよ」
「叫んでみないと分かんないじゃない?」
華恵と色々言い合ってたら、後半がスタートしていた。
再び華恵は市川くんに大きな声援を送り始めた。