改訂版・時間よ、止まれ。
試合終了直後。
フィールドの隅っこで熱い応援をしていた斉藤さんが、すぐさま新井の側に駆け寄った。
斉藤さん、すごく嬉しそうな、いい笑顔してる…。
何か新井に言葉をかけながらタオルを渡す姿を見て、ちょっとサッカー部のマネージャーという地位がうらやましくなった。
こうやって観客席から応援することしかできない私は、所詮部外者なんだな…。
ハッキリとそう言われたような気がして。
「…帰ろうか、華恵」
「…ねえ、さおり。新井がこっち来てるよ?」
「…え!?」
帰る準備を済ませて席を立ち上がろうとしたら、華恵にそんなことを言われ、私は思わず華恵の視線の方向を見つめた。
すると…
観客席の入口の方から、タオルを首に巻いた青いユニフォーム姿の新井が、何故かこっちに向かってきていた。
観客席にまだ残っていた新井ファンの女子達は、キャーキャー叫びながら新井を見ていたけど、新井はそんな女子達に全く目もくれていなかった。
「おいっ!井上!!」
「…私?」
明らかに新井はこっちに向かって走ってきていた。
…なんで?
てか、選手が観客席に入って大丈夫なの!?