先生あのね・・・
直江先生が座っていた席には
今、小西先生が座っている。
私は小西先生に言われる通り
先生の横の椅子に座った。
「大丈夫か?」
「はい。マユは?」
「先に教室に帰ったよ」
私は俯いた。
そんな私の様子を見ながら先生は話し始めた。
「初めて君を見たとき
君が“羽田萌”ってすぐに分かったよ」
私はその言葉に驚いて顔をあげた。
「どうしてですか?」
「俺と健太郎は高校時代からの腐れ縁でな・・・・
健太郎から君の話はよく聞かされていたんだ。
飲みに行くと、女の話しなんかしたこともないあいつが君の事ばかり話していた。
真っ直ぐで
泣き虫で
どこか危なげで
‘自分が側にいてやらないと心配だ‘って。
君の事が本当に大切で
かわいくて仕方なかったんだろうな」
小西先生は直江先生とのやり取りを懐かしむ様に語った。
「でも何も言わずに私の前からいなくなっちゃった」
遠くを見るように弱々しく微笑んだ。
そして続けて言った。
「先生。
私ずっと考えていたんですが、学校を辞めます。
来てもこんな状態だし、
私にとってここに残ることは何の意味もない…」
小西先生はしばらく考えるようにしてから優しく尋ねた。
「本当にここに残る事は
羽田にとって意味のないことなのか?」