先生あのね・・・


「失礼します。
直江先生はいらっしゃいますか?」

私は放課後に数学準備室に来た。


まだ他の先生も仕事をしている中で奥の方から顔を覗かせた先生。

「羽田どうしたんだ?」

「すみません。
少しお話をしたいのですが…」




「ついてきなさい」


私は先生の後ろをついて歩き

誰もいない指導室で向い合せに座った。



「突然どうした?」

いつもの先生の口調。


「先生ごめんなさい。
私、先生の事を無視してた」

神妙に話し
目を伏せながら先生の反応を待った。

「あぁ…」

先生はボソッと答えるだけ。

「怒っているよね?」

不安を抱え、上目遣いに先生を見る。



「怒らないよ」

と微笑む先生に

「本当に?」

もう一度尋ねた。

「本当に」

「私の事、嫌いになってない?」



先生がふっと横を向いて笑った。


「そんな事でならないよ」


不安から解放されて私も小さく笑った。



「話ってその事か?」

私は頷く。


「私ひどいことしちゃったと思って。
嫌われたらどうしようって…」


瞳を潤める私に先生は

「心配するな」

と言って

クシャクシャと頭をなでてくれた
< 29 / 145 >

この作品をシェア

pagetop