先生あのね・・・
「失礼します。
直江先生はいらっしゃいますか?」
私は放課後に数学準備室に来た。
まだ他の先生も仕事をしている中で奥の方から顔を覗かせた先生。
「羽田どうしたんだ?」
「すみません。
少しお話をしたいのですが…」
「ついてきなさい」
私は先生の後ろをついて歩き
誰もいない指導室で向い合せに座った。
「突然どうした?」
いつもの先生の口調。
「先生ごめんなさい。
私、先生の事を無視してた」
神妙に話し
目を伏せながら先生の反応を待った。
「あぁ…」
先生はボソッと答えるだけ。
「怒っているよね?」
不安を抱え、上目遣いに先生を見る。
「怒らないよ」
と微笑む先生に
「本当に?」
もう一度尋ねた。
「本当に」
「私の事、嫌いになってない?」
先生がふっと横を向いて笑った。
「そんな事でならないよ」
不安から解放されて私も小さく笑った。
「話ってその事か?」
私は頷く。
「私ひどいことしちゃったと思って。
嫌われたらどうしようって…」
瞳を潤める私に先生は
「心配するな」
と言って
クシャクシャと頭をなでてくれた