先生あのね・・・
その時
後ろから「卒業おめでとう」と
聞こえてきた。
この声に振り返ると直江先生が立っていて
桂木先輩は
「どうも」
と軽く挨拶した。
何となく気まずさを感じる。
でも、意外に先生と桂木先輩は話しながら冗談を言い合って笑っていた。
その二人のやり取りが
なんだか嬉しくて
楽しくて
それが私の顔からこぼれ出て
自然と笑っていた。
そんな私の姿を見た桂木先輩は
「やっぱり俺じゃダメか・・・
そんな風に笑う萌を初めて見たよ」
少し切なそうに目を細めて笑った。
その後で
桂木先輩は先生に向って
「萌を泣かす様な事があったら俺が奪いに行きますから」
と冗談を言った。
その言葉にオロオロする私。
先生はそんな私をよそに
「そんなことさせるか」
まるで友達同士で擽り合ってじゃれ合うみたいに笑った。
その言葉に赤くなった私を見て、先生も桂木先輩もまた笑った。
そして、桂木先輩は最後に
「いろいろ大変だろうけど頑張れよ」
そう私に言って背中を向けた。
「先輩、ありがとう」
遠ざかっていくその背中に声をかけた。
桂木先輩は振り返ることなく
片手を挙げて人混みの中に消えていった。