先生あのね・・・


「羽田?」

先生に声をかけられて

この場に先生と二人で残されてしまったことに緊張が走った。




考えてみれば

学校の、しかもこんなに大勢の生徒がいる中で、先生と話したことなんてなかった。



「何ですか?」

何となくそっけない態度になってしまう。


「羽田も来年の今頃は卒業だな」

先生は中庭にいる生徒達を見渡しながら言った。


「そうですね。
もう一年しかないんですよね」


「羽田にとっては
『もう一年しか』か・・・
俺にとっては
『まだ一年も』なんだけど」



遠くを見るように目を細め
微笑みながら言う先生を見上げた。


「どういう意味ですか?」

「教えない。
でも、今度のテストで100点を取ったら教えてやるよ」


「そんなの無理じゃないですか〜
私、数学苦手なんですから…」


真面目に答える私に



「知ってる」

先生はいたずらな目をして笑った。
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