先生あのね・・・
「俺にとって萌は初めから生徒ではなかったよ。
だからあの日、食事に誘ったんだ
俺は『教師』としての立場を捨てられないのに・・・
一緒にいる事で
萌が寂しい思いをする事も
泣かせることも分かっていた。
それでも無邪気に話をする萌を見ていたら自分の気持ちを止めることなんて出来なくて
…ただ、萌を失いたくなかった」
私は頬を伝う涙をそのままに目を閉じて
ただ静かに聞いていた。
「俺は萌を抱かない訳ではないよ
・・・抱けないんだ」
私はその言葉に大きく目を開けた。
「どうして?」
「怖いんだ。
今、萌を抱いてしまうと
本当に自分を抑えられなくなってしまう。
そしたら萌の先生でいられる自信がない。
大切にしたいんだ・・・
だから、きちんと卒業するまで待ちたい。
それじゃダメか?」
先生の腕の中で首を横に振った。
「俺にとって萌は…
“たった一人”の人なんだ」
先生は振り向いて見上げた私の涙を拭いて
やさしいキスをした。