【短編集】キミをみてる。~瞳で伝える恋心~
「着替えてくるな。」
なぜだろう?
若菜には、意識しなくても
優しさをこめて微笑むことができる。
若菜の前だけ、俺は人間になれる気がする。
しっかりと、感情をもった人間に。
好きだ。
と、心が勝手にさわぐんだ。
抱きしめて、むちゃくちゃにキスをして
そのすべてを手にいれたい。
俺でいっぱいにしてやりたい。
できることなら、この手で若菜を壊したい。
できないことにほど、欲望は高まる。
けれど、こぶしを握り締めて耐え抜くしかない。
それが、父さん、母さん
そして若菜
にとって
一番幸せなことだから。