マリア教会
そこには一人の少女が立っていた。あれが、教会の宝。
少女はスッと息を吸い、その声を吐き出す。
「……」
静まり返ったお御堂に少女の歌声だけが響く。
優しいメロディーに、少女の透明で力強い声が聴く者の心に流れ込んで来る。
お御堂に集まった人達は少女の歌声に聞き惚れているが、レイラは別の事に目が行ってしまい、歌なんて聴く余裕がなかった。
(何で…何であんなに悲しそうに歌うの…?)
最初は曲に合わせて表情を作っているのだと思ったが、曲調がアップテンポな明るい感じになっても、少女は表情を変えなかった。というより、少女は歌えば歌うほどその悲しみの色を強くする。
歌が好きだから歌ってるんじゃないの?キミは全てを手に入れてるんじゃないのか?
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