マリア教会
雪乃の死はその日に教会全体に伝えられ、翌日には教会で式が行われた。
雪乃の人柄もあったからだろう、式には教会の者殆どが参列し、雪乃のファンもたくさんいたらしく、街の住人も式に参加した。
だが夏季は式に出なかった。詩織に誘われたが、断った。
雪乃の死を受け入れられない。雪乃は今もお御堂で歌を歌ってるはず。
そう思うが、雪乃の墓前を前にすると、雪乃はもうこの世にいないんだと思い知らされる。
参列者はみんな帰り、その場には夏季しかいない。
空には雨雲が広がり、呆然と立ち尽くす夏季に一粒一粒の雨粒が落ちて来て、やがて本降りとなった。
と、夏季の頭上だけ雨が止んだ。
「風邪引くよ」
詩織が傘を差し出してくれた。