禁断の恋はじめます
地獄の宣告を受けた。
 

進行性の胃がん


啓吾の体はもう手術する術もなく
手遅れの状態だった。


もっと早く病院に来ていたら
助かったかもしれない
しかし啓吾はもう 人生に絶望して
死ぬかもしれない

そういう恐怖を
受け入れてしまっていた。



痛みをおさえながら
抗がん剤治療をすることになった
啓吾は 病院に入ったなりに
もっともっと衰弱してしまった。



「啓吾……。」


力ない目が私を見る。


「昨日の看護師さ 注射下手。
痛かったよ。だから病院やなんだって。」


朝の申し送りで
啓吾の血管になかなか針がさせなかった
当直の看護師に言われた。


「今日は大丈夫 私がいるから。」


「白衣の天使……頼むな。」


落ちくぼんだ目が笑った。
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