禁断の恋はじめます
「あの部屋に啓吾がいるの?」

母の泣きはらした目は
ボッコリと腫れていた。


「うん。すごく変わっちゃったけど
啓吾だよ。」


母は心臓を静かにおさえた。


「大丈夫だよ。ママ……。
俺たちの啓吾だよ。やっとやっと
会えるんだ。
ママが一生懸命に啓吾を忘れない
努力をしてきたから
きっと神様が俺たちに啓吾を
返してくれたんだよ。」


父が母の肩を優しく抱いた。


こんな二人を見たのは
何年ぶりだろう。
啓吾が出て行ってから
二人は喧嘩ばかりしていた。


  やっぱり啓吾は太陽だ


私はそう思った。


病室に入ると啓吾がこっちを見て
何とも言えない表情を見せた。


「啓吾……。おかえり。」
父が優しい声で言った。


「どこほっつき歩いてたの。
遅いから…心配してたのよ……。
帰ってきたら机の上の教科書とか
片づけなさいよ。」

母が啓吾のそばに近づいて


「おかえり・・・・。
ずっとずっとこの日を信じてた。」

そう言うと啓吾を抱きしめた。


私は嗚咽になりそうな声を
必死にこらえて

「おかえり。」と言った。
< 347 / 443 >

この作品をシェア

pagetop