禁断の恋はじめます
啓吾は何も言わなかったけれど
枕に向かって流れ落ちる涙は
両親との対面を
喜んでいるように思えた。


「啓吾……啓吾……。」


母は確かめる様に何度も名前を呼ぶ。



「私の啓吾……。
どれだけ大切に育てたかわかる?
あなたは友之と祥子と私とパパ
四人の愛情によって
育てられたのよ。」


母はそう言うと啓吾の髪の毛を
優しく撫ぜる。


「やっと失くしていた
宝物が見つかった…ね?パパ……。」


「そうだな。啓吾と朱奈
二人は俺たちの大切な宝物だからな。」


父も啓吾に近づいて
点滴漏れで紫色に変色している
細い腕を撫ぜた。


「…さん……」啓吾が口を開いた。


「ん?何?啓吾……。」


「ただいま……。ずっとずっと…
会いたかった……。
こんな姿になって…ごめ…んなさい…。」


啓吾の声が震えていた。


母は嗚咽を我慢できなくなって
泣きながら啓吾を抱きしめた。

「どんな姿だって…おまえが
そばにいてくれたら…それが…
俺らの幸せなんだぞ。
もう…ずっとここにいろよ。」

父の言葉も最後は泣き声に消えた。

私たちの再会は
涙と愛の言葉で満ち溢れていた。
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