禁断の恋はじめます
不思議だった。
あんなに衰弱していた啓吾が
家族に囲まれて過ごしているだけで
とても容態が落ち着いていた。


先生が
「おにいさん…生きたいという
気力が湧いてきてるんだな。
医学では証明できない
気持ちの部分がおにいさんを
変えてきてるのかもしれないね。」


容態がいくらよくても
啓吾の余命がこの先ずっと
増えることはない。

ただ痛みに歪んだ顔を見るより
穏やかに微笑む啓吾を
見ているだけでも奇跡だった。


特に母と一緒にいる啓吾は
まるで子供に戻ったかのように
無邪気な笑顔を見せた。


「かーちゃんのごはん食べたいな。」


「あら…じゃあ
先生に外泊お願いしようかしら。
最近ずい分いいようだから
ね 朱奈 聞いてみて!!」



「うん そうだね。
調子がいいって先生も言ってたから
お願いしてみよう。」
私もできるだけ明るく言った。



「家か……。帰りたいな~。」

啓吾が静かに目を閉じた。
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