禁断の恋はじめます
「会いたい人はいない?」

苦しい顔で朱奈が言った。


もうすぐ…楽になるんだと
その表情で悟った。



「裕子と……先輩……。」



「わかった。」

朱奈はそう言うと病室を
出て行った。


次の日 裕子が現れた。


「よ・・・。」
神妙な顔の裕子に声をかける。


「バカね。まだ若いのに……。」
痛みで起き上がることもできない俺を見て
裕子は涙を拭いた。


「あんとき俺を拾ってくれて
あんがと……。」



「私が啓吾の人生…
めちゃめちゃにしたのね。
あのまま嘘に守られていたら
こんなことには
ならなかったって…妹ちゃんに
怒鳴られたわ。
ほんと…そうだと思う。
わがままだったな。
啓吾が友之にあまりに似てて……
そばにいてほしいって
錯覚しちゃったのかもしれない。」



「もういいよ。
これが俺の人生……。
いろんなことがわかってよかった。
短かったけどさ…
愛されてるの…よくわかった。」



「そう…。」



「裕子も幸せにな。
会えてよかった…よ。」

俺は裕子の手を握った。


「ありがと。」



裕子の深い目尻のしわが
悲しみを物語ってる気がした。


肩を落として裕子は
病室を後にした。

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