禁断の恋はじめます
「おにいさんが病気なんですって?」


勇樹の母親は
働く女系で 朱奈を
一瞬で観察しようとしていた。


「はい。
もう長くは……。
兄が勇樹さんと一緒になるのを
とても強く望んでくれていたので
申し訳ないのですが……
こんな風に急いでいます。」


「後輩だとか?」



「「はい。
勇樹さんを尊敬してます。」



緊張したけれど
まっすぐ前を向いて
目を見つめながら話をした。




「うちの会社を継がずに
違う会社に就職を決めてしまって
そのことでもこっちは
バタバタしてるのに
次は結婚と言われて
正直こっちは
パニックになってます。」

勇樹の父親が笑ってくれて
少しホッとした。


「事情が事情ですね。
おにいさんお気の毒だね…。」



「はい……。しばらく離れて
暮していて 病院に来た時には
もう手遅れでした。
バカな兄で……腹が立ちます…。」


思わず声が震えた。



啓吾を失いたくないけれど
あの苦しみようを見ていると
早く 解放してあげたくなる。


まるで死を望んでしまってる
自分が鬼のようでいやになる
母が毎晩泣くように
私も同じ気持ちだった。
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