アヲイモリ
Prologue
「もうお別れ…なの?」
「ああ。というか、素子は俺に逢わない方が良いんだ」
分かってた、そう言われることは。
いつかこんな風にお別れするのも、心のどこかで気付いてた。
でも、怖くて…認めたくなかった。
「もう、素子は強いんだ。俺なんかいなくても大丈夫」
「…うん」
私、そんなに強くないよ。
ちっぽけな身体には、まだ ちっぽけな勇気しかない。
「素子…?」
そんな風に見ないでよ。
これじゃあ、いつまで経っても別れられないじゃん。
「じゃあね、素子。俺は行くから」
さよなら。アオイ。
『素子がどうしても俺を必要とした時は、また逢えるから』
アオイは私の心の中で囁いた。
その言葉の裏には“でも、俺としては逢いたくないな”多分そんな言葉が隠されているのであろう。
アオイが私のことを思ってそう言うのは分かってるけど────辛いものは辛い。
だって、私はアオイが大好きだから。
「アオイ!!!!」
私は、二度と呼ぶことがないであろう名前を大声で叫んだ。
*アヲイモリ*