アヲイモリ
「一命は取りとめたっていったけど…意識が戻らないんだ」
「意識が…?」
「事故の衝撃が強かったのかな。頭を強く打ったらしくて───…もし意識が戻ったとしても、後遺症が残るかもしれない」
「そんな…」
お母さんが…。今日の朝も普通に朝見送ってくれたお母さんが────…
「どうすれば、良いんですっ、か?」
「ほら…泣いちゃダメだよ。 病院に来たら、お母さんに話しかけてあげたら良いかもしれないね」
先生は私の頭をポンポンとなでた。
「ほっ、本当に…?」
「うん。そのためには素子さんも頑張ってね」
「…はいっ」
私はすぐにお母さんの元へ向かった。
「お母さん?私だよ、素子」
ガラガラガラ…
先生は気を使ってくれたのか、静かに病室を出て行った。
「今日はね、理科の実験あってね、私のグループ失敗しちゃったんだぁ」
私はそれから、夜遅くなるまでずっとお母さんに話しかけていた。