アヲイモリ
「あ、そーいやあ…名前何? 聞いてなかったよな」
「素子。小崎 素子」
「…モト、コ?」
「うん」
あんまり聞かないよね、素子って名前。
私の両親は、私が“素直な子に育ってほしい”から素子って名前にしたんだって。
「良い名前だな、素子。あ、俺の名前はアオイ」
“アオイ”は元々細い目をさらに細め、ふわりと笑った。
何だか不思議な空気に包まれているような気がした。
「素子はどうしてこの森に来たの?」
「あ、えっと、それは…」
そうだよ。そのことを早くアオイに言わなくちゃ。
「ここって…お客の願いを何でも叶えるっていう あの【アヲイカフェ】ですか?」
私が勇気を振り絞ってそのことを言うと、さっきまでニコニコしていたアオイの表情は変わった。
「それ、誰から聞いたの?」
「誰っていうか…そういうのがあるって噂になってるんだよ」
「噂、か」
アオイは、近くにあった椅子に腰をかけた。