お隣りのあなた。
「…何をやってるかを聞いてるの!!」

ななちゃんのままが、まさに叫びそうなほどの怒りを抑えてわたしたちに言った。わたしは初めて見るななちゃんのままの怒ったその表情と、ひしひしと伝わるその怒りに肩をすぼめた。手の平のキャンディーを力強く握った。

「…じゆうに、なったの」

ななちゃんが淡々と言った。横のななちゃんをこっそり盗み見れば、涙のあとが頬にあった。泣いてはいなかったが。ななちゃんのままもそれに気付いたようだった。物凄い勢いでわたしをキッ、と睨んできた。

「あなた、なずなに何を吹き込んだの!?」
「ひっ」
「菜乃子ちゃんは関係ない!!」

ななちゃんのままに負けないくらい大きな声でななちゃんが声をあげた。

「なずなが、わがまま言ったの!菜乃子ちゃんは悪くない!!」

大声をあげたななちゃんに、ななちゃんのままは驚いたようにななちゃんを見たが、すぐに怒った顔になって「なずなは黙ってなさい!」と怒鳴り、ズカズカとこちらにスーパーの袋を揺らしながら歩み寄ってきた。

「こどもだけで、うちのなずなを巻き込んで、何やってるの!!」

明らかにわたしに言われた台詞。だけど怖くて何もわたしは言えなかった。それが頭にきたのか、実際のところはよくわからない。

「まま!!」

ななちゃんのままがわたしの頬を思い切り叩いた。ななちゃんの悲痛な叫びが、叩いた音が重なってわたしの耳を貫いた。

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