お隣りのあなた。
ななちゃんが横で涙を堪えているのが一目でわかる。格子に置かれた手は、強く拳を握り震える体を押さえているように見えた。

「だったら、じゆうになればいいんだよ」

こどもならでは、というか、単純というか。特に深い意味を持たずにわたしはななちゃんに言った。

「どうやって?」

涙ぐんだななちゃんの目がわたしを貫く。

「ひみつで出掛けよう!」

言ったわたしにななちゃんは目を丸くする。「けど、どうやって?」ななちゃんが不安げに呟いた。

「ままが居ないときに、こっそり家を出よう。それで、4人で冒険しようよ!」

言っていてどんどん楽しみになっていった。考えるだけで待ち受けているであろうそのスリルにドキドキと胸が高鳴った。

「4人?」

ななちゃんが小さく小首を傾げた。ななちゃんは何をしてもかわいい。
わたしはななちゃんに2体の人形を差し出す。
ななちゃんの猫の人形のちゃーりーと、わたしの小さなうさぎの人形のキャンディー。

それを見たななちゃんは小さく笑ってくれた。

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