お隣りのあなた。
「乗せて乗せて!」
「うわ、おまえは〜!またかよ」
スピードを落としたタケルの自転車を捕まえて、素早く後ろに乗り込んだ。ガタン、と自転車は1度大きく揺れ、すぐにまた安定を取り戻した。タケルがはぁ、と疲れたようなため息を吐き出す。自転車は諦めたようにゆっくりと走り出した。
「ねえねえ。ため息吐くと幸せ逃げるんだって。知ってた?」
「誰のせいだと思って…まあいいや」
そしてまたため息。よく聞けばタケルの声が若干掠れている。…昨日のカラオケのせいだ。まだタケルはカナの事を気にしてるのかもしれない。だとしたら、重たいこのため息にも納得がいく。
「タケル」
「んあ?」
「声。変」
「るせー。おまえだって大して歌ってねえのに声枯れてんぞ」
「そりゃ、あんたの合いの手やって盛り上げてたからね」
「それはどうもありがとうございました」
「タケル」
「なんなだよ、おまえ」
「カナ」
「!!?」
「うわっ、ちょ」カナの名前を出した途端、自転車が大きく蛇行した。いくらなんでも動揺しすぎだろ、これは。