お隣りのあなた。
暫くして安定を取り戻したタケルは「…カナがなんだよ」と小声でわたしに話しかけた。「いやー、あのさ」わたしは口ごもりながら、「まだ好きなんだなあ、と思って」
「…そんなにすぐ忘れられる訳ないだろ」
「……だよね」
「あったりめーだ」とボソとタケルが毒を吐く声が聞こえたと思ったら、自転車は急にスピードを増した。
「う、わ!落ちるっ」
突然のことでわたしはタケルに咄嗟にしがみついた。タケルは気にする様子も見せずにどんどんスピードを加速させていく。
「タケ、タケル!危ないっ、危ないよ!」
「気にすんなーっ」
ぐんぐんと人を通り越し、みるみると景色は変わって行く。自転車でもこんなにスピードが出るのか。
いつの間にかタケルは立ち漕ぎを始めていて、わたしは更に強くタケルにしがみついた。バサバサとスカートの裾が大きく揺れ、鞄に付いている飾り(というよりは人形?)がスカート同様に大きく揺れた。
わたし達はにはあっという間に学校の校門到着した。タケルは案の定汗だくだし、わたしはわたしで軽く冷や汗をかいている。
「…菜乃子と…タケル?」
声の主はカナ。何故かその声はいつもとトーンが違う。
「お、おはよ」
「おはよう…それよりあんた達、何時から付き合ってんの…?」