お隣りのあなた。
 

カナの元に駆け寄るわたしを、カナは可笑しそうにクスクスと笑った。まだカナに説明が足りなかったのかと思って、少し恥ずかしくなる。

「カ、カナ本当に違うんだよ!大体、カナはわたしの好きな人知ってるじゃんか!」
「うん。ちょっとからかってみただけだから。ごめんごめん」
「もー!からかうなよ!」「うん、ごめんってば。教室いこ?」
「うんっ」

まだ顔が少し笑っているものだから、心のうやむやは除けない。

『おはよう…それよりあんた達、何時から付き合ってんの…?』

好きな人にそんな事言われたらショックだよな、と少し前を思い出して胸がチクリ、と痛んだ。

『なんでそーなるんだよ!』

わたしのせい、だ。
わたしのせいでタケルは傷付いた。
あー、もう。もやもや。もやもや。
やだな、こういうの。

「…菜乃子?ごめん、そんな怒るとは思ってなくて」
「え?嫌、違うんだよ。ごめん考え事してただけ」
「今日も、…見たんだね」
「?」
「ななちゃんの」
「あー。うん。………ぁ」

昇降口の真上の二階の窓をふと見上げた時に、あの人と目が合った。
昨日、ぶつかった男子生徒だ。

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