お隣りのあなた。
 

「!?」

びっくりして相手を見て、わたしは息を呑んだ。ポケットからはキャンディーがひょっこりと顔を出している。
わたしは訳がわからずオロオロとしてしまう。
相手は自嘲気味に、フッ、と笑って「やっぱりあんただったんだ」と言ってきた。

「や、やっぱりって…」
「声聞いてもしかして、って思ったんだよ。…それよりあんた調子悪いの?」
「う、うん。気分があんまり優れなくて…」
「…ふーん。てかこのままでいいから、ちょっと話せる?俺あんたに聞きたい事があるんだよね」

聞きたい事。それはわたしが聞きたい事と類似する質問に違いない。
わたしも聞きたい事がある。このチャンスを逃したらいつななちゃんの事を聞けるかわからない。わたしは小さく頷いてみせる。

わたしの反応を見て、その男子生徒はわたしが寝ているベッドに躊躇う事無く腰掛けた。
わたしは慌てて起き上る。なんだかわたしが寝ていて、相手が起きているのは相手に失礼な気がしたからだ。

「いいから寝たまんまで」

わたしが起き上がりきる前に声をかけられたが、わたしはそれを無視して起き上がる。まだちょっと気分は悪いが起き上がれない事はない。

「そのまんまで言いっつてんじゃん」
「わっ!!」


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