お隣りのあなた。
 

結局体制はそのまま、「…話し逸れたけど」相手は話を始めた。

「なんでこの人形の名前知ってんの」

わたしの肩を押さえ付けていた片手を外し、ポケットから携帯電話を取り出した。小さくキャンディーが揺れる。…体制は結局変わらないようだ。

「昔、友達と交換したやつなの。直接交換したわけじゃないんだけど…」

顔が近くて、緊張する。意識している訳ではないが、自然とゴニョゴニョと話してしまう。

「友達って、“沢谷なずな”?」
「!!や、やっぱり知ってるの!?」

久しぶりに聞いたななちゃんのフルネーム。やっぱりこの人はななちゃんの事知ってるんだ。
先程の緊張とは違う緊張感がわたしを襲う。体制とか、顔が近いとか、もはやどうでもよくなってくる。

「…ななちゃんと知り合いなの?」
「あー…まあ」

歯切れの悪い返事だった。だけど知り合いにはかわりないのだ。わたしは構わず続ける。

「ななちゃん、今何処にいんの!?まだ東京に居る!?高校、行ってる!?てか、元気にしてる!?」
「…あんた、喋りすぎ」
「え?…あ、ごめん、つい」
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