お隣りのあなた。
相手は呆れたような顔をして軽くため息を吐いた。咄嗟に「ご、ごめんなさい」謝ってしまう。
「言っとくけど」
ポケットに携帯電話をしまい込み、まるで当たり前とでも言うように「タダじゃ教えねーから」
「え」
「タダで教えると思った、って顔してんな」
くく、と喉を鳴らして相手は笑った。馬鹿にされてるのか、これは。
「……ケチ」
「あ?」
「なんでもない、です。それより、どうすれば教えてくれるの?」
こんな偶然、滅多にであえるものじゃない。今の今までななちゃんの情報を持っている人にはであえなかったのだ。ここでななちゃんの事聞いとかなければ何時ななちゃんの事を知るる事ができるかわからない。
「…お金払ったら教えてくれんの?マック奢ったら教えてくれんの?」
「………」
「ねぇ。ねえってば、聞いてます?」
「聞いてる」
だったら反応しろよ、と心の中でつっこむ。心の中で。「顔にでてんぞ」心の、中で。そんなもの皆無だったが。
「“沢谷なずな”の事知りたいんだろ?」
顔が近付く。
「う、ん。知りたい」
「だったら、俺と付き合え」