お隣りのあなた。
 

一瞬思考が停止する。しかしその思考は直ぐに動き出す。
まさか昨日出会ったばかりの人に、お付き合いしましょう!みたいな事はないだろう。きっとどこかに付き合え、みたいな内容に違いない。例えば、買い物とかマックとか、カラオケとか。危ない危ない。はやとちりして危うく恥をかく所だった。早めに気付いてよかったとわたしは安堵の息を小さく漏らす。

「あの、それはど」
「何処に行くの?とか言ったらその口塞ぐからな」
「………」
「図星か」

また少し顔が近付く。目の前には昨日出会ったばかりの男子生徒の顔でうめつくされた。あと1回その顔が下がると、本当にわたしの唇は塞がれてしまう。

「ち、違うから!そんな事質問しようとしてないから!」
「………」
「な、何、その信じてない顔はっ」

あからさまな疑いの眼差しがわたしを直視する。

「それより、どうするの?」
「?…あ!えと、」

付き合うか、付き合わないか。
付き合えばななちゃんの情報が手に入る。
付き合わなければ、わたしは今後、一切の情報を知る事ができないかもしれない。

答えは、ハッキリしていた。

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