お隣りのあなた。
 


翌日、生徒会が無いカナがいつもよりも早めに我が家に来た。朝こうしてカナに会うのは少し久しぶりな気がする。

「思ったよりも元気そうで安心した」

スウェット姿の寝ぼけただらし無いわたしの顔を見ておはよう、の挨拶より先にカナはわたしにそう言った。声はやや呆れていた。

「なんかいっぱい寝たら、元気になったよ」
「そう。とにかくよかったじゃない。早く着替えて、学校行こう?」
「うん!」

いっぱい寝た、というのは嘘だった。寝るとななちゃんの夢を見そうで怖かったから、極力起きているよに音楽を大音量でかけたり、本や漫画を読んだりして気を紛らわせていたのが事実だ。
結局寝たのはいつもと同じくらいの時間で、幸い、というか、意外というか。ななちゃんの夢は見なかった。だからカナの目には“元気”に写ったのかもしれない。


「行ってきます!」
「ちょ、菜乃子、朝ごは」
「いらなーいっ」

お母さんが追い掛けて来る前にわたしは玄関の外へと慌ただしく飛び出した。

「朝ごはんくらい、待ってたのに」
「いいの。早く学校行きたいし」

早く学校へ行って、やりたい事があるのだからと心の中で付け足した。
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