お隣りのあなた。
 


…結局、そのまま時間は流れて放課後に。探しても探してもその姿は無くって、昨日出会ったのは一体何だったんだろう。

「それじゃ菜乃子、また明日」
「うん。バイバイ…」

カナの後ろ姿を見送ってから、わたしはトボトボと美術室に向かい始めた。
元気を出そう。須賀部長を見て、癒されればいいや。ポジティブに。そう、何語とも向上的に考えなければ。
また、明日がある。明日、もう1回探せばいいのだ。学校を辞めちゃったって事はないだろうから、きっと大丈夫。

「あら、菜乃子さんじゃない」
「あ、こんにちは」

脇にたくさんの資料を抱えた保健室の先生は、にこやかに笑った。つられてわたしも笑う。うまくは笑えなかった。

「もう調子はいいの?」
「はい。お蔭さまで…―――!」
「どうかした?」
「い、いえ。それじゃ、さよなら」
「?気をつけて帰るのよ〜」

なんで、もっと早く思い出さなかったんだろう。

『ホントに、もうあの子いつもこうなのよね』

最初から、気付いていればよかった。
保健室に行けば高い確率で、会える。

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