お隣りのあなた。
寝ているその人は、わたしが探していた人に違いなかった。ゆっくりとカーテンを開けて、顔を覗きこんだ。規則正しい寝息が聞こえる。この分だと当分起きそうにない。
「………、」
あまりにも気持ち良さそうに寝ているものだから、起こすのは躊躇われた。
肌、きれいだな。手入れとかしっかりしてるのかな。
睫毛長い…。いいなぁ。
髪の毛フワフワしてそう。ワックス…かな?
…って!!
違う!なに寝てる人を観察してるんだ!なんか言ってる事変態みたいだし。
とりあえず、起こそう。でなきゃ話しは始まらない。
「も、もしもーし。起きて下さいー」
とりあえず、声をかけてみた。が、起きる気配はない。多少声のボリュームを上げて、もう1度呼びかけてみる。
「あのー、ちょっと、藤田、君。起きて下さいー」
しかし起きる気配は、ない。
「ちょっと、起きてよ…!」
「…ん、…」
「!!」
3度目の呼びかけに、小さく反応した声は、低くて、かすれていてやたらエロい。咄嗟に1歩、後ろに下がる。高校生でもこんな声、でるんだな。と五月蝿い心臓に対抗するように心の中で呟いた。