お隣りのあなた。
「お、起きて、起きてってば」
照れている場合ではない。わたしは相手の肩を軽く揺らした。
「…んー…」
「!………、」
「……あんた、なんでいんの」
目覚めた彼の声はやはりかすれていて妙な色気がある。目を小さく擦りながらむっくりと起き上がった。この人、性別間違えちゃいないだろうか。綺麗すぎる。女に生まれてきたなら絶世の美女になっているに違いない。
「聞いてんの?」
「っ!聞いてます!」
見とれていました、とは言えず、咄嗟に聞いてもいないのに聞いていたと答えてしまった。やってしまった。
相手も相手で、疑いの目でわたしを見ながら、「…そう?」
「えっと、…嘘。聞いてませんでした」
「んだよ…」
呆れたような声に、わたしは小さくなる。「すみません」と口元でゴニョゴニョと謝った。