お隣りのあなた。
 


「それで、あんたどうしてここにいんの?」

大きく伸びをしながら、わたしに再度問い掛けてきた藤田、君にわたしは「あ、」本来の目的を思い出した。

「実は、探してたの。やっと見つかった…」
「探してた?」
「話したい事、あったから」

ななちゃんの事、と付け加えると、「ああー」と納得したが、面倒だと言わんばかりの態度だった。

「…昨日、ななちゃんが……、…」
「死んだ?」

わたしが言えなかった事を、代わりに彼が代弁した。何となく、その単語は言いづらいものがあった。

「そう。ソレ、…本当?」
「あー、ホントホント」

軽い口調だったから、嘘なのかと思ったけど、顔は真剣そのものだったから真実だともとれる。

「なんで?」
「………」
「ななちゃんに、何が起きたの」
「………」
「ねぇ、教えて」

鼻の奥がツン、として目にじんわりと涙が溜まってきた。なんで自分が泣きそうなのか、わからない。泣きたいとは思っていないのに。どうして。
相手は黙り込む。ただ、真っすぐわたしを見ていた。わたしはそれを涙目で見返す。

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