お隣りのあなた。

「………」
「………」

沈黙が重たい。ああ、やばい、泣くな。泣くな、自分。泣いたら駄目だ。話しが続かなくなる。アレ、わたしってこんなに泣き虫だったっけ?

「あんた…」
「あい…?」

わたしは普通に“はい”と返事をしたつもりだった。実際は鼻声になってそうは聞こえなかったけれども。藤田君は少し呆れ顔で、ちょっとだけ恥ずかしくなった。
藤田君はまあいいけど、と小さく呟いた後話しを続けた。

「…なんでそんな泣きそうになってんの」
「!!」
「うわ、ちょっ、」

その台詞が彼の口から発せられた瞬間、わたしの涙腺は見事に決壊した。訳がわからず焦った藤田君の声が耳に入ってきたけど、涙はボロボロ溢れる。

「ちょっと、なんで泣いてんだよ」
「ごめ、っごめ、ん、なさいー…っ!」

カッコ悪いし、恥ずかしいし、迷惑かけてるし。最悪の状況だ。戸惑う藤田君に謝ったけど、上手く伝わったかは定かではない。

「……、…」
「ごめんな、さ――!?」

藤田君は相変わらずの戸惑い顔でわたしを見ていたから、もう1度謝ろうとすると。唐突に藤田君の手が延びてきてわたしのネクタイを掴んだと思ったら、グイ、とわたしの身体は藤田君に引き寄せられた。

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