弱く儚いモノ達へ




パチパチと燃え上がる炎。
真っ赤に染まる家。
中で動く人影。
   


「…お…おかん…お…おとん…。」



カメラを首から提げ声にならない声で燃え盛る家を見つめる。
   



「おかん。おとん。」



狂ったように家に走りこもうとする博貴を後ろから取り押さえる消防士。
   



「離せ。離してや。」




腕を振り払おうと精一杯もがく。
   


「中におるねん。おかんとおとんがおるねん。」



泣き叫ぶ博貴を力強く抱きしめる消防士。
   





「何でや。何で…何で僕だけ…おいてくねん…。」






膝から崩れ落ちる博貴。
残されたカメラに気づくとカメラを優しく抱きしめる。
炎上する家にピントを合わせシャッターを1枚だけ切る博貴。





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