弱く儚いモノ達へ
落ち着きを取り戻すとポケットから1枚の写真を取り出す。
真っ赤に燃え盛る家が映し出されている。
「…その家の中におってん…。おかんとおとんが。気がついたらシャッターきっててん。」
写真から博貴へと視線が変わる。
驚きを隠せない表情の皆。
「僕だけおいて死によった。…死んでん。」
カメラへと視線を落とす博貴。
「生活苦って言えばええのか。毎日が戦争やってん。逃げても逃げても追い回してくる借金取りに気が狂いそうやった。おとんが連帯保証人にさえなれひんかったらこんなことにならへんかったんやって。そう想ったこともあってん。せやけど好きやってん…好きや…。」
涙で言葉を詰まらせる博貴。
「ぼ…僕の誕生日がおとんとおかんの…命日になってしもうた…。…残されたのは誕生祝のこのカメラと置いてかれた僕だけや…。」
頬をつたう大粒の涙。
かける言葉も見つからない皆。
「ごめん。大切なカメラなんに僕のせいで落としてもうた。」
声を振り絞る隆平。
「ええねん。壊れてひんし。それに隆平のせいちゃう。僕の不注意やってん。」
作り笑顔をこぼす博貴。
「やけど。」
「隆平のせいちゃうよ。気にせんといて。」
落ち込む隆平に声をかける博貴。