弱く儚いモノ達へ




うつむいたままカメラを見つめる博貴。
博貴を見つめる1つの視線。
   


「亮。」


信五の声に博貴に集まっていた視線が亮へと向く。
   
「もう。ええんか。」

心配そうに声をかける。
   
「おう。」

顔色が戻りいつもと変わらない亮の姿。
   

「心配かけてごめん。」


皆に背を向けぼそりと呟く。
  
「何 謝っとんねん。お前だけやないねんから。」
   
背を向けたままの亮の肩を2度軽く叩くすばる。
   

「やけど驚いたやろう?」


振り向く亮。
その目に光る涙。
   


「俺がこの船乗った理由。逃げたかってん。今の現実から。この自分自身から。」



こぼれ落ちる涙。
   


「最後の旅にするつもりやってんな。」



亮を見つめる裕。
   

「ああ。終わりにするつもりやってん。何もかも。」
   
「何でや。」


声をつまらせる忠義。
   



「俺の兄貴。人殺しの汚名かぶって刑務所におんねん。」



静かに語りだす亮。
   

「ゲームセンター襲撃での店長殺し。」
   
「こ…殺し。」


言葉を失う隆平。





< 59 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop