弱く儚いモノ達へ





「やめろや。」


割ってはいる忠義。


「章大に聞こえるやろう。」
   

小声で呟く忠義。



「せやけど。このままじゃあかんやろう。」
   


感情的になるすばる。


「確かにな。やけど本人が言わんのやったら待つしかないやろう。今は。」
   

目線を伏せる亮。

「見てられひんよ。今の章大。」
   
章大から皆へと視線を変える。


「なぁ。裕には見えてるん?」
   

左手の包帯を巻き返している裕へと声をかける博貴。
皆の視線が裕へとむく。


「ごめん。」
   

表情も変えず左手を見つめる裕。


「何も…何も見えひんかった。あいつからは何も。」
   

ずっと黙っていた裕が口を開く。



「章大からは何も伝わってこうへん。真っ暗なんや。真っ暗闇の中にあいつはおる。」
   


目を伏せる裕。



「この手。何の役にもたてひん。」
   


左手で何度も地面を殴りつける裕。
そんな裕の姿から目を逸らすことしか出来ない。
不安に瞳を震わせながら章大を見つめる信五。





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