弱く儚いモノ達へ
夕日。
オレンジ色に染まる空。
眠りにつく章大の隣で
信五の傷の手当をする裕。
「…い…いつからやったやろう?そう。弟が死んだあの日から。耳鳴りが止まらなくなってん。“お前が見殺しにした”そんな声がつきまとうようになったんや。」
俯いたまま語りだす信五。
「動かなかったんや。苦しみ足掻き僕を必死に呼んでる弟の姿に恐怖心を感じてしまってん。僕を呼んでるのに身体はぴくりとも動かひん。」
涙声。
大粒の涙が砂地を濡らしていく。
「幼かってん。あの時のお前は。」
声を絞り出す亮。
「やけど。あの時、薬を飲ませることが出来たなら弟は助かってたんや。助かって…。薬も持ち歩いてたのに…僕は…。」
ぐしょぐしょに涙で濡れた顔をあげる信五。
その瞳に光はない。
「そうや。お前が見殺しにしたんや。その苦しみから逃げるために俺も利用した。俺を作り出したんもお前やろう。」
急に乱暴な口調へと変わる。