有料散歩



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清潔な白いシーツ。
消毒液の染み付いた壁紙。

窓の外は鮮やかな夕暮れ。

綺麗な、


赤紫。



「……、明花、今、行くからなぁ…」


夕焼けに染まっていく室内は、畏怖すら感じる。


「芳一…、立派になったなぁ…弥生さん…世話になった…」


もう外と中の区別もつかない程、一日の終わりを惜しむ灯が包んでいる。

それは、なんとも切ない。


「…ゆき、牡丹のような…私の孫…幸せの…」


そして、



「…ああ…、…良准、私の…、息子…、」












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