有料散歩
『ついに』、両親はその言葉が使われる日がこないことを祈り続けていたけれど。
ついにこの日が来たのかと、口には出さずにつぶやく。
春樹はそのまま集中治療室に運ばれ、意識は戻らないまま。
どうしてだろう。
どうして、春樹なのだろう。
どうして、心疾患なのだろう。
どうして、今なのか。
人は何億人もいるのに、どうして春樹が障害を持って生まれたのか。
たくさん病気はあるのに、何故、よりにもよって心臓なんだろうか。
生きる楽しさ、生きてきた悔しさ、それを実感しはじめていた、今。
何故、今なのか。
悔しい、悔しい、悔しい。
この悔しさを打ち消すためには、
春樹の命が、
どうしても必要だ。
積み重ねた、思い出を、楽しさを、
悔しいままに、
終わらせては、いけない。