有料散歩
バスは毎日、村と町とを往復する。
田んぼの横の道を通るときはガタガタと揺れる。
「ばぁちゃん、ここ、座り。」
乗り込んできた老婆の手をとったのは、いつかの女学生。
バックミラーで老婆が座ったのを見届けると、
「…発車しまーす。」
そう言って青年はバスを動かす。
口元には笑みが零れていた。
バスにはたくさんの人が乗ってきた。
年寄りも子供も。
降りるとき、誰もが青年に微笑みかけ、
どうもね、お世話様ね、
とバスに声をかけた。
青年は毎日飽きることなくバスを運転する。
家に帰ってもなお、今日はこんな人が乗っただとか、相棒も楽しそうだったとか、バスでの出来事を語る。
うんうん、
と女学生も楽しそうに聞いていた。