有料散歩
鼻歌を口ずさみ、キッチンでは夏が朝食を作っていた。昨日も感じたが、以外だ。料理をするという行為が全く以て似合わない。
リビングのヒーターの前に服を並べて、春樹は洗面所へ向かった。
顔を洗って、温まった服に袖を通す。寝巻はきちんとたたんでバスルームへ持って行った。
そうこうしているうちに夏はすでに朝食をダイニングテーブルに並べていた。
何か手伝う、と寄ってきた春樹ににんまり笑い、もう出来たからと春樹を座らせた。
「さ、食おう食おう!」
見事な和食の献立。ご飯、みそ汁、おひたし、焼き魚、煮物。どうやって作ったのか、温泉卵まで。
無言で箸を取る春樹に、夏がお茶を入れながら言う。
「いただきます、は。」
田舎のおばあちゃんみたいだな、と思いながら呟くように言った。
「いただきます。」
お茶をテーブルに置いて、夏が向かいに腰掛けた。
「いただきます!」
両手を合わせて言う夏。先程の料理をしている時と同様に以外な彼の一面だ。
いや、勝手に以外と感じているだけで、本来こういう人なのだろうか。ただ、見た目とのギャップがありすぎる。
今目の前にいる夏は、実は昨日の出来事よりもショッキングな出で立ちだった。