有料散歩
春が過ぎ、
夏を迎え、
秋を通り越し、
冬が訪れる。
堅くした幹の外装を痛みを堪えて解き、
鳥と虫が交配を手伝って、
我が身が裂けるかのごとく風が吹き荒れる晩に実を落とし、
再び幹を堅く閉ざす。
どの季節にも、周りを囲んで宴がある。
毎日、日が一番高く昇るころ樵たちがやってくる。
ほっかむりをした樵たちは口々に話し掛けてくる。
「やぁ、やぁ、今日も立派なことです。」
「ご神木様にはおらたちを守ってけられてありがたいこっです。」
「ご神木様のおかげで森は豊かなんだべなぁ。」
細かい、細かい、細かいことだ。
何万億万の昼と夜とを繰り返し、気づけば見渡す限り空。
遮るものはなにもない。
代わりに下には大きな陰ができ、
風を遮っている。
そこでは細かいものたちが更に集い、肩を寄せ合い暮らしている。
なんと細かい、小さいことだ。
もうすぐ天に手が届くなぁ…。