有料散歩



暗雲たるや、細かき黒渦。
空に低く構えた小さな雨雲ならば届きそうだ。

早くここまで流れてこい。




ほら、触れた。
天を刺すまであと少し。



バリッ――バリバリッ―

ゴウッ――






「てぇへんだぁー!!」

「ご神木様が神鳴様に撃だったどー!!」

「早いどご助けてやんねばっ!」


樵たちは筵(むしろ)を巻く。添木をしてしっかりと紐でしばった。

パックリと裂けた天辺は、申し訳ないがといって切った。切り口には薬を塗った。

筵の隙間には虫たちがひしめき合う。こそばゆいけれども暖かい。

宿り木の根はちくちくするけれども崩れそうな幹を留めた。

根元に腰を下ろす苔どもはよりいっそうひしめき合い、土は甘く力がみなぎる。




なんと大きい、温かいことだ。





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