有料散歩
それからまた、幾千もの昼と夜が過ぎた。
細かくも大きいものたちは、代を替えても周りに集う。
温かい、温かいなぁ。
喉が渇くなぁ。
いつの間にか周りを囲んでいたものたちが少しずつ衰えていく。
干からび、朽ちていく。
雨はずっと降っていない。
ならば、と。
根を地中深くに潜らせる。
あった、あった。
大地の河。
汲み上げ、木のうろからほとばしらせた。
動物たちがこぞって飲みに来る。
苔が緑を取り戻す。
森は広く、ちょろちょろ流れ出るだけではとても足りない。
樵たちが神妙な面持ちで見上げていた。
「ご神木様、…ほんとに申し訳ねぇこってす。」
「今まで守ってけられだ恩を仇で返すようなおらたちを恨んでけろ。」
「ご神木様の下ば流れてる水脈が、どうしても必要なんでがす。痛いべけんども、…御身に斧入れさせていただぐす。」
「根っこば掘り起ごすす。」
かーん…こーん…
「すまないことで…」
かーん…こーん…
「申しわけねぇことで…」
かーん…こーん…
よい、よい。
いいのだ。
細かい、細かい、細かいことだ。
いいのだ。
痛くも痒くもない。
なんてことない細事だ。
ああ、温かかったなぁ…
細かい、なんと細かい我が身だったことかなぁ…
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